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右傾化が進んでいるといわれるドイツ。
本当のところはどうなんでしょう? そして右傾化に地域差はあるのか?旧東ドイツ地区、特にザクセンに集中しているのはなぜなんだろう? ドレスデン出張中、ばったりペギーダのデモに紛れ込んでしまって以来、東ドイツ好きとしては、その疑問が頭を離れません。 ペギーダってそもそもどういう風に結成され、広がって来たんでしょうか。 まず、 PEGIDA ペギーダとは Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlande 「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」の略語。 日本語で「欧州」と訳されているAbendlandアーベントラント とは、Morgenlandモルゲンラント(Orient〜中近東)に対しての「西欧」であり、この言葉を使うことで、対する「モルゲンラント」をより意識させます。 ![]() 写真はベルリンのペギーダ(ベルギーダBärgida)です。ありがたいことに100人も集まってません。 結成は2014年10月。その経緯を追ってみます。(出典:sächsische Zeitungほか) きっかけとなったのは 10月10日、ドレスデン中心部で起こった約200名のクルド人と極左のデモだったそうです。 彼らの主張はISISに対しての戦いのため、クルディスタン労働党に武器を!というもの。 ペギーダのトップ、☆ルッツ・バッハマンはこのデモについて「法に反するテロリストたちに武器を運べと言ってたんだ。2000人は居たと思う」と後に語っており、このデモをビデオに収めています。 10月11〜12日 後のペギーダ創立メンバーとなるルッツ&ヴィッキー・バッハマンと、レネ・ヤーン(脱退)ほか4名が初めて集まり、トルコ人とクルド人の戦いがドイツの地で行われることに反対しよう、などと話し合ったよう。 Facebook立ち上げの際に書かれた、グループの説明は「西洋のイスラム化に反対する平和的なヨーロッパ人」。 14日、 ここで前マイセン市のFDP党員で、市議であった☆ジーグフリード・デブリッツが加わります。 デブリッツはフーリガンなどの極右グループとのつながりもあり、ここでグループ名も「平和的」→「愛国者」へと変化します。ドレスデンにて、ペギーダ結成。Facebookで、初の☆「月曜デモ」の呼びかけ。 20日 聖母教会の前で行われた、初のペギーダデモには約350人が集まりました。 サッカーチーム「ディナモ・ドレスデン」のフーリガンや極右のメンバー(例えば、2月13日のドレスデン大空襲時に行われるネオナチデモのオーガナイザーや、エルツ地方でのNPD(極右政党ドイツ国家民主党)のデモの中心人物や地元の前NPD州議会議員、そして、右派政党AfDの党員もいたそうです。 デモの参加者の半数がFacebookの「友だち」となりました。 11月3日 1000人ほどが集まるようになった月曜デモ。 バッハマンは演説のなかで☆「Wir sind das Volk(我々こそが人民だ)!」と繰り返し強調し 「犯罪を犯す外国人たち」について語ったほか、マスコミとは関わりを持たないように勧めました。 この際のスローガンは「君たちのために、君たちの家族のために、そして祖国のために」。 Facebookの友だちは3300人以上、ぐっと知名度を増します。 「月曜デモ」が回を重ねるにつれ、参加者も増えていきます。 各地で、ベルギーダ(ベルリン)レギーダ(ライプツィヒ)ポギーダ(ポツダム)などなど分派も発生。 2015年1月21日 バッハマンが、Facebookなどで難民を「害虫」「Dreckspack(汚いやつら)」などと言っていたことや のヒットラーの格好で撮った自撮り写真などが公表されたことから、代表を辞任。 1月25日 オランダ人エドヴィン・ヴァーゲンスフェルトが右翼/反イスラム政治家ヘルト・ウィルダースの挨拶を読み上げ物議をかもします。(彼自身は南ドイツ在住で11月からペギーダのデモに参加、12月には演説もしていたとか) → ヘルト・ウィルダースは4月に自らペギーダデモに登場。 「テロリストの大半がイスラム教徒」と主張し「イスラムはドイツに属している」とメルケル批判を浴びせます。 27日 創立メンバーだったレネ・ヤーン、カトリン・エーテルら5人が脱退。ルッツ・バッハマンは再びトップへ返り咲きます。 しかし、その後2万人近くにふくれあがっていた参加者は10分の1ほどに激減。 5月にはデブリッツと極右政党NPDの党首フランク・フランツが一緒に写った写真が公表されます。 6月、ドレスデン市長選でペギーダからの立候補者に10%の票が集まりますが、デモの参加者は2000人〜ほどにとどまります。 しかし、難民受け入れが高まってきた夏〜秋にかけて再び参加者が増え 結成1周年のデモには1万人以上が、エルベ川沿いの旧市街を埋め尽くしました。 ペギーダは1年の間に、かなり過激化していったと言えるでしょう。 私がたまたま見かけた結成一周年のデモでは、ハーケンクロイツはさすがに見かけなかったものの☆Wirmer-Flagge(ヴィルマー旗)と呼ばれる、赤字に黄色と黒の十字が交差する旗や第三帝国の旗も。 「メルケルは去れ!」という言葉はいまや普通で、絞首台を手にした参加者も多かったですし、もう演説でも「難民Flüchtlingen」とは表現せず、「亡命寄生虫Asylschmarotzern」「侵略者Invasor」、、、Facebookのコメントには「害虫」「Dreckspack(汚いやつら)」「人間のくず」などという罵倒が並んでいます。 また11月パリのテロの後には、(ペギーダによれば)4万人が参加。現在ペギーダのFacebook、いいね!の数は20万を越えています。 中心メンバーは、もともと極右的な考え方を持っている人たちだったのが、支援を受けて以前よりもおおっぴらに差別主義的な発言をしているのだと思います。 とはいえ、月曜デモに参加している人たちの理由は様々で、「反イスラム」「反難民」が主流ではあるものの、全然それとは関係なくデモに出てる人もいるようです。テレビのインタビューでは「孫や子どものことを考えたら、ドレスデンがベルリンのクロイツベルクみたいになるのは反対」と参加理由を説明している人もいました。「反マルチカルチャー」?具体的に説明できない、不安をかかえている、というだけの人もいるでしょう。 とはいえ私は難民には見えないと思うんですが、外国人というだけで、カメラを向けたというだけで暴言や唾を吐かれることもあり……なにはなくとも(?)現状に不満を抱えている人たちのるつぼになっているような気がします。 先日の州議会選挙で大躍進をとげた新右派政党AfD(ドイツのためのもうひとつの選択)との関わりについては、また改めて追っていきたいと思いますが、2013年に結成されたAfDの中でも様々な動きや変遷があり、一時期はAfD=ペギーダ政党とも言われていましたが、そこにも色々な意見があります。ペギーダところか極右政党のNPDに近い人もいますが……まあそれはまたあらためて。 ☆ルッツ・バッハマン 1973年、ドレスデン生まれ。肉屋の一家に生まれ、東西ドイツ統一後は現在の妻ヴィッキーと広告業などを営む。ドラッグ販売や空き巣、暴力事件などで逮捕歴多数、一時期は南アフリカに逃げ、2年間偽名で暮らしていた。ドイツに戻り、ドレスデンで服役し、保護観察付きで釈放されたが、再びコカインが見つかるなどしている。本人は自身を人種差別主義者ではないと主張し「結婚式のつきそいはトルコ人だったし、ムスリムの友人も沢山いる」との発言も。 ☆ジークフリード・デブリッツ マイセン生まれ。 マイセンで両親とともにペンションを経営。元FDP党員。父もFDPの党員だった。 バッハマンの友人であり、過去に逮捕歴がある。昨年AfD党員登録を出すが断られている。 ☆月曜デモ もともとは、旧東ドイツ時代、1982年からライプツィヒのニコライ教会で毎週月曜日に行われていた「平和の祈り」に端を発し、1989年9月からは群衆が集まり、言論や旅行の自由と平和を求め、独裁体制に反対する非暴力デモとなった。10月9日のデモは、指揮者クルト・マズーアらを中心に7万人を集め、ここからベルリンの壁崩壊につながった平和革命とされる。「Wir sind das Volk(我々こそが人民だ)!」という言葉がスローガンとなる。 ☆「Wir sind das Volk(我々こそが人民だ)!」 月曜デモにおいて、Wir sind EIN Volkー東西統一を求め、「1つの国民である」というスローガンだったのが、1989年秋、ライプチヒで行われた平和革命で、ニコライ教会を中心に集まった群衆に銃を向けたVolkspolizei(東ドイツ人民警察)に対し、誰のための警察なんだ? 私たちこそが(守るべき)人民だという意味を込め、「Wir sind DAS Volk(我々こそが人民だ)!」と繰り返し叫ばれたのがきっかけだったらしい。 ペギーダにおいては、(なんで外国人を助けなければいけないんだ)という意味を多分に含み、俺たちこそが国民だろ、的な意味で使われていると私は理解しています。 ☆ヴィルマー旗 ナチス対抗グループのためにヨーゼフ・ヴィルマーが考えた新たなドイツの旗。 2010年代からなぜか極右シーンでよく使われる旗となっている。(ヒトラー暗殺未遂事件後、1944年に処刑されてしまったヴィルマーさんもこれでは浮かばれない……)
by berlinbaubau
| 2016-03-21 09:20
| ドイツのこと
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