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「24 Wochen(24週間 決断の時)」
今年のベルリン映画祭、コンペ部門唯一のドイツ映画!と話題になっていた本作。 © Friede Clausz Berrached監督の長編2作品めとなる本作は、24週目、つまり妊娠6か月以降、子どもを中絶するにいたった女性の話です。 ユリア・イェンチ演じるコメディアン、アストリッドは妊娠5か月。 出生前診断で子どもがダウン症陽性と判断されます。 パートナーと話し合い、出産しようと決断した2人でしたが さらに超音波診断によって、先天性の重い心臓病を患っていることがわかり…… 映画のなかで、セレブでもあるアストリッドはパートナーはもちろん、友人や家族だけでなく、知らない人からも声をかけられ、悩みます。 「ダウン症の子どもをうむなんて、本当に勇気がある、素晴らしい決断ですね!」とプールのシャワールームで突然ファンに話しかけられ、「大変だよ」と知り合いには医者の名刺を渡され、ベビーシッターにはそっぽを向かれ、娘には「(ダウン症の人が)気持ち悪い」と拒否されて。 中絶しようかと迷えば、パートナーには「これから一生、うしろめたく感じ続けたくないんだ」と言われ、医者と会い、病院を訪ね、ダウン症の子どもたちが集まる劇団を訪ね、カウンセリングを受け、教会へと足を向け…… いくつもの場面でアストリッドはスクリーンの向こうから、観客をじっと見つめてきます。 © Friede Clausz 「あなたなら、どうしますか?」と。 >>ネタバレを含みます。この映画を見ようという方は、スキップしてください〜! 日本でも、2年前に導入された新型出生前検診について、命をめぐる決断が様々なメディアで取り上げられていたようですが、日本では中絶可能なのは22週未満までのところ、ドイツの場合は、身体的かつ精神的に問題が認められた場合には、出産直前までの中絶が可能だそうです。 >>>追加注記 ドイツでは現時点(2023年)でも、刑法218条により中絶は違法ですが、いくつかの規定の条件下の場合罰則はありません。 (そのため、2022年まで「中絶の宣伝」を違法とするナチス時代に決められた刑法219条aが有効でした。そのため中絶の詳細な説明をサイトにアップしていたお医者さんに対する訴えが相次ぎ問題に。新政府のもとでこの悪法は廃止となりました。これについてはこちらを参照) 12週目まで、もしくは22週目まで、でいくつか変更点はありますが、医者のカウンセリングを受けて行われ、また母体の身体的かつ精神的健康が害される場合、妊婦に対する罰則はありません。(医師に対する罰則の可能性はある)場合によっては中絶費用の負担もあります。 合法ではないけれど妊婦は罰は受けないというグレーゾーンです。詳しくはドイツ連邦家族省のサイトをご確認ください。 ちなみに旧東ドイツDDRでは1972年に、12週目までであれば女性が中絶を決める権利が与えられています。西ドイツでは1871年(!)ドイツ帝国ができた時からの法律がそのまま適用されていて、どんな形であれど中絶は懲役刑でした。そのため東西ドイツが再統一したことで女性の権利が奪われたとする向きもあり、改正を試みましたがバイエルン州などカトリックの強い州では根強い反対があるようです。 >>> 生きて生まれる子どもの命を奪うーという決断はタブーであり、いままでは語られれずにきたテーマでした。 Berrached監督は、この現実を痛いほどにまっすぐと直視します。医師や助産師は役者ではなく、本物に出演してもらい、実際このシチュエーションに遭遇した場合の対応をしてもらったそうです。 専門用語ばかりの医師のことば、助産師の、中絶の前後に関する詳細な説明に涙が出てきます。 © Friede Clausz 実はBerrached監督も、妊娠3か月で中絶をしたことがあるそうです。 いまだに、その子どものことをしょっちゅう思い出し、生まれていれば今頃は……と悩むことが多かったとか。そんな彼女を心配した友人がくれた、後期中絶についての新聞記事には、同様の診断を受けたドイツの女性の9割が、中絶すると書かれていました。 この映画を作るにあたって、監督は中絶の決断をした家族と、産む決断をした家族の両方から話を聞き、入念なリサーチを行いました。 中絶なのか、産むのか、2択のようですが、100人いれば100の理由があり、生まれていてもいなくても、その後の時間も人それぞれ、ひとくちには言えないでしょう。 映画の最後にそっと囁かれる一言は、Berrached監督の、失った子どもへのメッセージのような気がしました。 「24 Wochen」 上映スケジュール: 2月21日 22:30〜 Haus der Berliner Festspiele ドイツでの公開も予定されています。
by berlinbaubau
| 2016-02-19 03:05
| 映画、だいたいドイツ
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